大統領就任直後、文在寅(ムン・ジェイン)は長い間、在籍していた進歩系の弁護士団体「民主社会のための弁護士会(民弁)」を脱退した。韓国の法曹関係者は「大統領が特定団体の会員として残るのは互いに負担になるからだろう」と話した。
民弁は「民主化」「人権」を“盾”に保守政権と対決してきた。最近では、2016年4月、中国浙江省にあった北朝鮮レストランから集団で韓国に脱北した元女性従業員12人、男性1人の「人権」をめぐり、朴槿恵(パク・クネ)政権(当時)と対立した。
女性らが韓国入りした翌日の4月8日、韓国統一部は緊急記者会見を開き、集団脱北の事実を公表した。
当時野党の「共に民主党」は、6日後に迫っていた「総選挙に利用する目的だ」と反発。「これまで国家情報院(国情院)は北朝鮮にいる家族に配慮して脱北の事実を公開しなかった」と政府を非難した。
その年の1月、北朝鮮が4回目の核実験を実施したため、朴政権は南北の協力事業である開城(ケソン)工業団地の稼働中止を決定していた。そして、それまでの慣例を破って脱北の事実を公表した。韓国統一部は、集団脱北者が出たのは韓国の独自制裁が効いている証しだと説明した。
韓国政府の発表に北朝鮮は「従業員らは韓国が誘引、拉致したものだ。即謝罪し、送還しろ」と猛反発した。
こうした北の主張に「民弁」所属の弁護士や一部の市民団体が同調した。
5月13日、民弁をはじめとする67の社会団体は「集団脱北は政府が企画した疑いがある」として真相究明を求める記者会見を開いた。
さらに民弁は中国在住の大学教授を通じて女性らの家族から委任状を取り寄せ、ソウル中央地裁に「従業員の人身保護救済の審査」を請求する。
民弁は、「本当に自由意思による脱北だったのかを確認するため審理を公開し、証人として出廷してもらう。脱北が自由意思でないのなら一日も早く女性らを北朝鮮にいる家族の懐に返すべきだ」と主張した。
対北向け放送「自由北韓放送」代表で自身も脱北者のキム・ソンミンは、「民弁は偽善者集団」と痛烈に批判した。
「女性らと一緒に韓国に来た(レストランの支配人とされる)男性もおなじ脱北者なのに彼ら(民弁)の関心外にいる。なぜか。北朝鮮が彼のことだけは非難しているからだ」
韓国の有力月刊誌の記者も「脱北者が中国などで拘束され、北朝鮮に強制送還されることについては一言も言わなかった民弁が脱北者の権利を守ると称して人身保護を主張し、北の家族に返すべきだと主張するのは納得がいかない」と批判した。
ソウル中央地裁は、11月、「従業員らは既に保護施設から社会に出ている状態なので救済の必要はない」と民弁側の請求を棄却した。
ソウル五輪を控えた1988年5月28日に結成された民弁はもっぱら「時局事件」(公安事件)を弁護してきた。特に北朝鮮工作員がらみの弁護活動は民弁が引き受けてきた。
2003年11月、民弁統一委員長を歴任した弁護士の一人はテレビに出演して、「1987年の大韓航空機爆破事件の犯人、金賢姫は完全にでっちあげだ。北の工作員ではないとわれわれ(民弁)は断定する」と主張した。
しかし、この主張は翌年の盧武鉉政権下の再調査で「根拠なし」とされた。
民弁は、極左政党「統合進歩党」をめぐり憲法裁判所が2014年に強制解散の決定を下したことを「司法殺人」と非難した。北に追従し内乱を画策したとして元同党所属の国会議員、李石基が拘束されたことを民弁は「公安弾圧」と主張。文も「民主主義に傷がついた」と発言した。
民弁は、盧武鉉(ノ・ムヒョン)、文在寅という2人の大統領を輩出したが、「共に民主党」系列の政治家の多くが民弁出身者だ。ソウル市長の朴元淳(パク・ウォンスン)、城南市長の李在明(イ・ジェミョン)、国会議員にも多くいる。
韓国政治を40年近く取材してきたベテラン記者は「民弁は左派運動勢力の結集体」だと断言している。=敬称略(龍谷大学教授 李相哲)
http://www.sankei.com/west/news/170817/wst1708170081-n1.html
民弁は「民主化」「人権」を“盾”に保守政権と対決してきた。最近では、2016年4月、中国浙江省にあった北朝鮮レストランから集団で韓国に脱北した元女性従業員12人、男性1人の「人権」をめぐり、朴槿恵(パク・クネ)政権(当時)と対立した。
女性らが韓国入りした翌日の4月8日、韓国統一部は緊急記者会見を開き、集団脱北の事実を公表した。
当時野党の「共に民主党」は、6日後に迫っていた「総選挙に利用する目的だ」と反発。「これまで国家情報院(国情院)は北朝鮮にいる家族に配慮して脱北の事実を公開しなかった」と政府を非難した。
その年の1月、北朝鮮が4回目の核実験を実施したため、朴政権は南北の協力事業である開城(ケソン)工業団地の稼働中止を決定していた。そして、それまでの慣例を破って脱北の事実を公表した。韓国統一部は、集団脱北者が出たのは韓国の独自制裁が効いている証しだと説明した。
韓国政府の発表に北朝鮮は「従業員らは韓国が誘引、拉致したものだ。即謝罪し、送還しろ」と猛反発した。
こうした北の主張に「民弁」所属の弁護士や一部の市民団体が同調した。
5月13日、民弁をはじめとする67の社会団体は「集団脱北は政府が企画した疑いがある」として真相究明を求める記者会見を開いた。
さらに民弁は中国在住の大学教授を通じて女性らの家族から委任状を取り寄せ、ソウル中央地裁に「従業員の人身保護救済の審査」を請求する。
民弁は、「本当に自由意思による脱北だったのかを確認するため審理を公開し、証人として出廷してもらう。脱北が自由意思でないのなら一日も早く女性らを北朝鮮にいる家族の懐に返すべきだ」と主張した。
対北向け放送「自由北韓放送」代表で自身も脱北者のキム・ソンミンは、「民弁は偽善者集団」と痛烈に批判した。
「女性らと一緒に韓国に来た(レストランの支配人とされる)男性もおなじ脱北者なのに彼ら(民弁)の関心外にいる。なぜか。北朝鮮が彼のことだけは非難しているからだ」
韓国の有力月刊誌の記者も「脱北者が中国などで拘束され、北朝鮮に強制送還されることについては一言も言わなかった民弁が脱北者の権利を守ると称して人身保護を主張し、北の家族に返すべきだと主張するのは納得がいかない」と批判した。
ソウル中央地裁は、11月、「従業員らは既に保護施設から社会に出ている状態なので救済の必要はない」と民弁側の請求を棄却した。
ソウル五輪を控えた1988年5月28日に結成された民弁はもっぱら「時局事件」(公安事件)を弁護してきた。特に北朝鮮工作員がらみの弁護活動は民弁が引き受けてきた。
2003年11月、民弁統一委員長を歴任した弁護士の一人はテレビに出演して、「1987年の大韓航空機爆破事件の犯人、金賢姫は完全にでっちあげだ。北の工作員ではないとわれわれ(民弁)は断定する」と主張した。
しかし、この主張は翌年の盧武鉉政権下の再調査で「根拠なし」とされた。
民弁は、極左政党「統合進歩党」をめぐり憲法裁判所が2014年に強制解散の決定を下したことを「司法殺人」と非難した。北に追従し内乱を画策したとして元同党所属の国会議員、李石基が拘束されたことを民弁は「公安弾圧」と主張。文も「民主主義に傷がついた」と発言した。
民弁は、盧武鉉(ノ・ムヒョン)、文在寅という2人の大統領を輩出したが、「共に民主党」系列の政治家の多くが民弁出身者だ。ソウル市長の朴元淳(パク・ウォンスン)、城南市長の李在明(イ・ジェミョン)、国会議員にも多くいる。
韓国政治を40年近く取材してきたベテラン記者は「民弁は左派運動勢力の結集体」だと断言している。=敬称略(龍谷大学教授 李相哲)
http://www.sankei.com/west/news/170817/wst1708170081-n1.html